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【 不定期 連載小説 】
全てのMMOを楽しむ戦士たちに、色を贈ります。
みそ×ジェミー 合同企画 FF14SS 

~僕は、彼女のことを何も知らない~
『明日の朝日は、そこにありますか』

[ 第8話 ]  バーラムダ



<登場人物>
・リュウ: ミコッテ♂を使うプレイヤー。リアル世界に嫌気が差している。
・タマキ(茉莉環):政府に選ばれたテスター。特別な権限がある。

・ゼン:リュウが所属しているLSのマスター。ハイランダーの男性。
・ぐっちゃん:アウラ女性。人懐っこい元気な性格。
・リマ:ミコッテ女性。占い師をしていてオーラを感じることができる。

・エドワード(大塚吉敷):GM。タマキの保護者的役割。
・ベルグ(堺里菜):タマキの主治医。

・めてゐ:バーラムダ2号店 「踊るララフェル亭」 の店主。
・マツリ:バーラムダ3号店 「居酒屋 猫のしっぽ」 の店主。



「君が環さんか」

そう問いかけられ、ベッドに上半身を起こした状態の環が、顔を上げた。
入ってきたスーツ姿の男性が、軽く会釈をして足を踏み入れる。
脇には白衣を着た女医、堺が立っていた。
堺に着ていたコートを預け、男性は持っていたフルーツ籠を少し持ち上げて、環に見せた。

「メロンとかは食べられるかな?」
「ありがとう……ございます。でも、私果物は食べてはいけないことになっていまして……」
「そうか……悪いことをしたな」
「いえ、嬉しいです。堺先生たちで食べてください」

環に言われ、堺が頷いて籠を受け取る。
男性は足を踏み出し、環に近づいた。

「私は大塚吉敷(おおつかよしき)と言う。君のプロジェクトを担当しているGMだよ」
「先生から聞いてます。大塚さん……ですね」
「ああ。ゲームの中ではエドワードと名乗ってる。どっちで呼んでもらっても、私は構わない」

大塚、と名乗った男性はそう言って椅子に腰を下ろした。

「本来はGMが被検対象に接触するのは禁止されているんだが、今回は特例でね。理由は……分かるね?」

問いかけられ、環は頷いた。

「はい。チャイっていうあの子の事ですね」
「そうだ。あの子の被験体ナンバーは3番。君より少し前にエオルゼアに入ってる。だが……あの子のプロジェクトチームと連絡が取れない。それに、あの子自身にもアクセスができないんだ」
「それって、どういうことなんですか?」

環が問いかけると、黙って聞いていた堺が口を開いた。

「チャイというプレイヤーが、完全に独立して暴走しているってこと。とめないとゲーム内で好き勝手されて、プログラムを滅茶苦茶にされるわ」

唇を噛んで俯いた環に、大塚が続けた。

「彼と同等の権限を持っているプレイヤーは、現在君を含めて他の四名だけだ。他のプロジェクトチームには連絡を取ろうとしているのだが、時間がかかる。そこで、できることを今、やっておきたい」
「私には……時間もありませんしね……」

呟いた環を少し沈黙して見てから、大塚は堺に視線を移した。

「スケジュールはできているのか?」
「ええ」

頷いて、堺は手に持っていたアイパッドを操作して環に渡した。

「少し制限されてしまうけれど、君の自由意志ではなく、ログインしていられる時間を私と合わせて欲しいんだ」

大塚が画面を指差しながら説明する。
環は頷いて彼を見た。

「分かりました」
「一つだけ聞きたいんだが……君は、あの少年と知り合いなのか?」

問いかけられ、環は大塚から視線をそらした。

『一緒にこの世界で遊ぼう!』

どこか必死に。
楽しそうではなく、悲痛な叫びのように問いかけてきたチャイの声が、環の頭にフラッシュバックする。

「いえ……知らない人です」

沈黙の後、環はそう言った。
大塚は頷いて立ち上がった。

「分かった。体調はどうだい?」
「今のところは……大丈夫です」
「時間を取らせたね。今日のログインは今から三時間後だ。私も同じ時間に入るから」
「あの……」

環が顔を上げ、大塚に問いかける。

「私は、どうすればいいんでしょうか?」

その根本的な問いかけに、大塚は少し黙り込んだ後、言った。

「チャイの、ゲームとリアルとのリンクを、君の改竄権限で解除して欲しい。私は全力でそのサポートをする」


「自分の手に負えなくなったから、あの子を使うの?」

病室を出て、廊下を歩きながら堺が咎めるように口を開いた。
大塚はコートを羽織りながら、彼女の方を見ずに言った。

「そうだ。このプロジェクトは、あの子一人の責任で動いているわけではないからな。世界中の沢山の病人が、この結果を必要としてる」
「あなたにだって強制解除の権限はあるはずよ。病気の女の子に押し付けるより先に、自分で何とかする努力をしてみたら?」

立ち止まって堺が大塚を睨みつける。
大塚は、足を止めて息をついた。

「随分とあの子に肩入れするんだな。元はと言えば、君がチャイ……いや、中萱壮介君の情報を私に開示してくれれば、全て丸く収まる話だったんだ」

きつい口調でそう言われ、堺が視線をそらす。

「それは……」
「…………」

歩き出し、大塚は一言付け加えた。

「私は、チャイをエオルゼアから追い出す。あの子は、あの世界にいてはいけない存在だ」

エレベーターに乗り込んだ大塚を見送り、堺は俯いてため息をついた。

「分かってるわよ……そんなことは」

小さな呟きは、どこか空虚な空調の音に紛れ、そして消えた。


この日は休日だったため、LSのメンバーは多くがログインしている。
昼の十二時を回ったところで、エドワードがゼンのFCハウスの庭に現れた。
続いてタマキもログインし、スゥ、と空中から姿を現す。
LSのメンバーを確認し、エドワードはまず、インしていたゼンに個別通信を送っているようだった。
程なくしてゼンとリュウがテレポで現れる。

「すまないね。呼び出してしまって」

エドワードに言われ、ゼンは肩をすくめて答えた。

「いやいや、メールも読んだし、問題はないよ。おはようタマキちゃん。具合はどう?」

問いかけられ、タマキは肩をちぢこませながら、どこか気まずそうに視線をそらした。

「大丈夫……です。あまり心配していただかなくても……」

どこか様子がおかしいタマキを見て、ゼンとリュウが顔を見合わせる。

「とりあえず、立ち話もなんだから中に入ろうぜ。エドワードさんに紹介したいメンバーもいるしね」

リュウが手を伸ばして、タマキの手を掴む。
ハッとして目を開いた彼女を家に引き入れた彼に続いて、エドワードとゼンも足を踏み出した。


FCハウスの中には、ぐっちゃんともう一人、褐色の肌をしたミコッテの女性が座っていた。

「おお、タマちゃんおはよう。いろいろメールとか読むのに時間がかかっちゃってね。今インしたとこ」

ぐっちゃんがそう言って近づき、タマキの手を引いてソファーに腰を下ろす。
隣に座ったタマキを、ミコッテの女性……占星術師の装備をした、どこか線が細い顔をした彼女が優しい目つきで見つめた。
初めて会う人の視線に、タマキが萎縮して小さくなる。

「この人はリマさん。いろいろと気がきく人でな。仕事の出張で今日帰ってきたんだ。俺達のお母さん的ポジションの人だ」

ゼンが紹介すると、リマと言われた彼女は軽く笑ってから言った。

「お母さん? お姉さんでしょ?」
「ハハ、悪い」

ゼンも椅子に腰を下ろす。
エドワードはスクリーンを操作してリマにフレンド申請を送ると、頷いてから口を開いた。

「確認した。リマさんにも今からメールを送るから、必ずチェックして欲しい」
「分かりました」

頷いて、リマはどこか思い詰めたような顔をしているタマキをじっと見つめた。

「悩んでる顔をしてるね」

問いかけられ、タマキはハッと顔を上げた。
リマは腕組みをして彼女から視線を離すと、息をついてゼンとリュウを見た。

「雰囲気が硬いね。いろいろ難しい状況のようだけど、あんまり張り詰めてたら、楽しいものも楽しくなくなるよ」
「まぁな……いろいろ起こりすぎて何とも、頭がついてこないっていうのもある」

リュウがそう言うと、リマは首を振ってタマキを見た。

「オーラが淀んでる気がする。そんなに思いつめることはないんじゃないかな」
「オーラ?」

タマキに問いかけられ、ぐっちゃんがそれに答えた。

「リマさんはね、ゲーム越しでも他の人の気配と言うか、オーラ的なものの色を見ることができるのよ。占い師やってるんだって」
「そ、そうなんですか……」

予想外な答えに目を白黒とさせたタマキからエドワードに視線を移し、リマは眉をひそめた。

「あなたが、この子……タマキさんの保護者なのよね」
「ああ。名乗るのが遅れたな。エドワードと言う」

頷いたエドワードに首を振ってみせ、リマは彼の鼻先を指差した。

「オーラが重いよ。ゲームは仕事じゃないんだから、混同しちゃ駄目。周りまで重くなるでしょ」

ビシッと指摘され、エドワードは息を詰まらせて口をつぐんだ。
そして少し考えてから軽く笑う。

「確かにな……あなたの言うとおり、仕事と混同してしまっている自分がいたな。悪かった」
「この子の遊びをサポートするんなら、あなた自身も楽しまなくちゃね。まぁ、初対面だから、私には詳しいことはよく分からないんだけど」
「まぁ、おおむねリマさんの言うとおりだから、気にしないでいいよ」

ゼンが口を挟んで、顔の前で手をヒラヒラさせる。

「今日はタマキちゃんとエドワードさんに紹介したい人がいてさ」
「紹介?」

エドワードが怪訝そうな顔をすると、リマが頷いて続けた。

「ええ。私の知り合いなんだけど。あなた達、他のチートプレイヤーを追ってるんでしょう?」
「そうなるな。情報は欲しい」
「なら、うってつけの場所があるわ。バーに行きましょう」
「……バー?」

首を傾げたタマキに視線をやって、リマは言った。

「ええ。漠然と逃げてる対象を追うのは得策じゃないわ。なら、噂が集まっていろいろ情報に通じてる人に協力を仰ぐべき」
「成る程……プレイヤーの有志でやっている、バーに行くというわけか」

頷いてエドワードが腕を組む。

「たしかに私達は、この世界ではかなり無知な状態に近い。後ろ盾もない。君達が仲介してくれるのはとても助かる」
「今回は、リマさんの個人的フレンドの、大きなバーを経営してるラムダって人にコンタクトをとってある。十三時から店を限定で開けてくれてるはずだ」

ゼンが壁の時計を見て言ってから、続ける。

「タマキちゃんは知らないかもしれないけど、エオルゼア……この世界の中で、店を作ったり、いろいろ現実世界みたいに商売をしてる人もいるんだ。バーもその一環。コンセプトはリアルの酒場みたいなものなんだ」
「そんな活動をしてる人が……」
「ラムダは話がわかる奴だから、色々聞いてみるといいよ。とりあえず、移動しようか」

リマがそう言って立ち上がる。
そしてニッコリと笑って、タマキの頭を撫でた。

「あなたの悩みの答えも、出してくれるかもね」


指定されたラベンダーベッドの住宅街にテレポし、集合すると、すでに十三時になろうとしていた。
リマの先導で歩いていくと、桃色の髪をしたララフェルの女の子が、テクテクとこちらに近づいてきた。
後ろにはミコッテの男性がついてきている。

「お、久しぶりだね」

リマが片手を上げて挨拶をすると、ララフェルの女の子が笑って言った。

「こんにちは、リマから話は聞いてるよ」
「この子はめてゐ。ラムダのやってるバーの、二号店のマスター。そして……」
「俺は三号店をやってる。マツリっていうんだ。よろしく!」

ミコッテの青年が近づいてきて、タマキとエドワードの手を握ってブンブンと上下に振る。

「君が天使の女の子かあ。確かに他に見ないアバターだね」
「マツリン、とりあえず店に入ろう。誰かに見られると面倒だし」

めてゐがそう言って歩き出す。

「本店は今日は限定公開だから、事前に教えてもらったあなた達以外入れないようになってる。個別通信もOFFにしといてね」

巨大な個人宅の前に到着し、目を丸くしているタマキを見て、めてゐは小さく笑った。

「ようこそ、バーラムダへ。中にどうぞ!」
 


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文:ジェミー(天寧霧佳)  挿絵:みそ(ここでセーブするか?